日本の労働市場において、少子高齢化による労働人口の減少は深刻な問題であり、外国人労働者の受け入れは年々その重要性を増しています。特に人手不足が顕著な分野においては、外国人材の確保が企業の存続に関わる喫緊の課題となっています。
2025年現在、⽇本の事業者が外国⼈を受け⼊れるために活⽤できる制度は、「技能実習」と「特定技能」の2つです。
この記事では、両制度の目的・仕組み・待遇・受け入れ側のコストなどを多面的に比較することで、どちらの制度を利用して外国人労働力を受け入れることが自社のためになるのかを判断いただけるよう、詳しく解説していきます。
制度の目的と位置づけの違い
外国人材を受け入れる際、まず理解すべきなのは両制度の根本的な目的の違いです。この目的の違いが、制度設計のあらゆる側面に影響を与えています。
| 技能実習 | 特定技能 | |
| 目的 | 国際貢献 (技術移転) | 国内の人手不足解消 (即戦力の確保) |
| 対象分野 | 91職種168作業 農業・林業関係(3職種7作業) 漁業関係(2職種10作業) 建設関係(22職種33作業) 建設関係(22職種33作業) 繊維・衣服関係(13職種22作業) 機械・金属関係(17職種34作業) その他(21職種39作業) 家具製作/印刷/製本/プラスチック成形/ 強化プラスチック成形/塗装/溶接/工業包装/ 紙器・段ボール箱製造/陶磁器工業製品製造/ 自動車整備/ビルクリーニング/介護/ クリーニング/コンクリート製品製造/宿泊/ RPF製造/鉄道施設保守整備/ゴム製品製造/ 鉄道車両整備/木材加工 社内検定型の職種・作業(2職種4作業) 空港グランドハンドリング/ボイラーメンテナンス 厚生労働省: 技能実習制度 移行対象職種・作業一覧 | 特定技能1号:16分野 介護/ビルクリーニング/工業製品製造業/ 建設/造船・舶用工業/自動車整備/航空/ 宿泊/自動車運送業/鉄道/農業/漁業/ 飲食料品製造業/外食業/林業/木材産業 特定技能2号:11分野 ビルクリーニング/工業製品製造業/建設/ 造船・舶用工業/自動車整備/航空/宿泊/ 農業/漁業/飲食料品製造業/外食業 ※介護分野は「在留資格・介護」に移行することが可能 |
技能実習制度の目的
技能実習制度は、1993年に創設された制度で、その建前上の目的は「開発途上国への技術移転」です。日本で培われた技能や知識を開発途上国の外国人に伝え、母国の経済発展を担う人材を育成することを目指しています。
つまり、制度上、技能実習生は「労働者」ではなく「実習生」という位置づけになっています。日本で働くことが目的ではなく、技能を学ぶことが目的とされているのです。
しかし、実態はどうでしょうか。多くの受け入れ企業において、技能実習生は実質的に「安い労働力」として活用されているのが現状です。長時間労働、低賃金、劣悪な労働環境といった問題が相次いで報告され、技能実習生の失踪や人権侵害が社会問題として注目されてきました。
この建前と実態の乖離こそが、技能実習制度が抱える最大の問題点といえるでしょう。「技術移転」という名目の下で、実際には労働力として扱われながらも、労働者としての十分な権利が保障されていないという矛盾が生じているのです。
特定技能制度の目的
一方、特定技能制度は2019年に創設された新しい制度で、その目的は明確です。「人手不足が深刻な産業分野において、即戦力となる外国人材を受け入れること」——これが特定技能制度の目的です。
技能実習制度との最大の違いは、特定技能制度では外国人材を「労働者」として正面から認めている点です。建前と実態の乖離はなく、人手不足を補うための労働力確保という実態に即した制度設計がなされています。
特定技能には「特定技能1号」と「特定技能2号」という段階があります。特定技能1号は最長5年間の在留が可能で、一定の専門性・技能を持つ外国人が対象です。特定技能2号は、より高度な技能を持つ外国人が対象で、在留期間の更新に制限がなく、条件を満たせば永住権の取得も可能になります。
つまり、特定技能制度は、短期的な労働力確保だけでなく、長期的なキャリア形成や日本社会への定着も視野に入れた制度といえるのです。

対象分野の違い
技能実習制度は、2025年時点で91職種168作業を対象としており、製造業を中心に幅広い職種をカバーしています。農業、漁業、建設、食品製造、繊維・衣服、機械・金属など、多岐にわたる分野で受け入れが可能です。
対して特定技能制度は、人手不足が特に深刻な16分野(特定技能2号は11分野)に限定されています。
この違いからも分かるように、技能実習制度は広く「技術移転」を名目とした受け入れを行っているのに対し、特定技能制度は「深刻な人手不足」という明確な課題に対応するための制度として設計されています。

両制度は目的も対象分野も異なるため、企業は自社のニーズ、業種、求める人材の特性に合わせて、適切な制度を選択する必要があるのです。
外国人の権利の違い
制度の目的が異なれば、当然ながら外国人材に認められる権利や待遇も大きく異なります。この章では、転職の可否、給与・待遇、家族帯同という3つの観点から、両制度の違いを見ていきましょう。
| 権利 | 技能実習 | 特定技能 |
| 転職・転籍の可否 | 原則不可 | 同一業種内であれば転職可能 |
| 報酬 | 実態として最低賃金水準にとどまることが多い | 日本人と同等額以上 |
| 待遇 (社会保険や労働保険) | 日本人と同様、労働基準法や社会保険・労働保険関係法令が適用される(加入が義務)。 | 日本人と同様、労働基準法や社会保険・労働保険関係法令が適用される(加入が義務)。 |
| 家族帯同 | 不可 | 特定技能1号:不可 特定技能2号:可能(配偶者・子) |
転職・転籍の可否
技能実習制度では、原則として転職・転籍は認められていません。技能実習生は、特定の監理団体・企業で実習を行うことが前提であり、実習期間中に他の企業へ移ることはできないのです。例外として、実習実施機関が倒産した場合や、実習先企業が重⼤な法令違反を犯しているなどやむを得ない事情がある場合に限り、転籍が認められることがありますが、極めて限定的です。
この転職制限が、技能実習生の人権問題の温床となってきました。劣悪な労働環境に置かれても転職できないため、失踪を選択する実習生が後を絶たないのです。
対照的に、特定技能制度では、同一の業務区分内であれば転職が可能です。たとえば、介護分野の特定技能外国人が、別の介護施設に転職することは自由にできます。これは、特定技能外国人が「労働者」として認められていることの証であり、日本人労働者と同様の職業選択の自由が保障されているということです。
転職の自由があることで、特定技能外国人はより良い労働条件を求めることができ、企業側も人材を引き留めるために適切な待遇を提供するインセンティブが働きます。これは、労働市場の健全な機能を促進する重要な要素といえるでしょう。
給与と待遇
技能実習生の報酬は、建前上は「日本人と同等以上」とされていますが、実態は必ずしもそうではありません。最低賃金ギリギリの給与設定が多く、実習生の多くが経済的に厳しい状況に置かれています。また、「実習」という名目上、残業代の未払いや不当な控除といった問題も報告されています。
技能実習生も日本の労働関係法令が適用されるため、社会保険(健康保険、厚生年金保険)や労働保険(雇用保険、労災保険)への加入は義務付けられています。しかし、制度の理解不足や悪質な受け入れ機関によって、適切に加入されていないケースも存在します。
特定技能外国人の報酬は、「日本人が従事する場合の報酬額と同等以上」であることが法律で明確に定められています。これは単に最低賃金を上回るというだけでなく、同じ業務に従事する日本人と同水準の給与を支払わなければならないということです。
特定技能外国人についても、社会保険や労働保険への加入は当然義務付けられており、完全に日本人労働者と同等の扱いを受けます。雇用契約も明確であり、労働条件も透明性が高いのが特徴です。
家族帯同
技能実習制度では、家族の帯同は認められていません。これは、技能実習が「技能を学んで帰国する」という短期的なプログラムという位置づけであるためです。実習生は単身で来日し、実習期間が終了したら帰国することが前提となっています。
特定技能1号でも、原則として家族の帯同は認められていません。ただし、特定技能2号に移行すれば、配偶者と子どもの帯同が可能になります。特定技能2号は、より高度な技能を持ち、長期的に日本で働くことが想定されているため、家族との生活も認められるのです。
この違いは、両制度が外国人材をどのように位置づけているかを端的に示しています。技能実習は短期的な「実習」、特定技能は中長期的な「就労」という性質の違いが、家族帯同の可否にも表れているのです。
求められる技能水準と日本語能力の違い
外国人材を受け入れる際、企業が最も気になるのは「どの程度の技能と日本語能力を持っているのか」という点でしょう。この章では、両制度で求められる技能水準と日本語能力の違いを詳しく見ていきます。
| 技能実習 | 特定技能 | |
| 技能レベル | 技能実習1号: 入国後、基本的な技能を習得する段階。技能検定等の合格は不要。 | 特定技能1号: 相当程度の知識・経験が必要。特定産業分野の試験に合格する必要があります。※技能実習2号修了者は試験免除。 特定技能2号: 熟練した技能が必要。特定産業分野の試験に合格することで移行可能。 |
| 日本語能力 | 技能実習1号: 簡単な挨拶や基本的な指示が理解できる程度。入国時の日本語試験は不要。 | 特定技能1号: 日常会話ができ、職場で基本的な指示を理解できるレベル(日本語試験 N4 程度)。 特定技能2号: 専門的な業務に必要な会話・読み書きができるレベル(N3〜N2 程度が目安)。 |

技能実習制度における技能レベル
技能実習制度では、入国時点で高度な技能は求められません。むしろ、技能実習の目的が「技術移転」すなわち「技能を教えること」であるため、未経験者や初心者が受け入れられることが前提となっています。
つまり、技能実習制度では、入国時点では技能がなくても、実習を通じて段階的に技能を習得していくことが想定されているのです。企業にとっては、ゼロから教育する必要があるということになります。
特定技能制度における技能レベル
対照的に、特定技能制度では、入国時点で「即戦力」となる技能を持っていることが求められます。これは、特定技能制度の目的が「人手不足への対応」であり、現場に入ってすぐに業務に従事できる人材を求めているためです。
特定技能1号の外国人は、各分野で定められた技能水準試験に合格する必要があります。例えば、介護分野であれば「介護技能評価試験」、建設分野であれば各職種に応じた技能評価試験などです。これらの試験は、実務で必要とされる基本的な技能を有しているかを評価するものです。
特定技能2号は、さらに高度な技能が求められます。熟練した技能を持ち、現場で指導的な役割を果たせるレベルが想定されています。2023年の制度改正により、特定技能2号の対象分野が拡大され、より多くの分野で高度人材の受け入れが可能になりました。
このように、特定技能外国人は入国時点ですでに一定の技能を有しており、企業は即戦力として活用できるというメリットがあります。
技能実習制度における日本語能力の要件
日本語能力についても、両制度では明確な違いがあります。
技能実習制度では、入国時点での日本語能力水準が定められていません。そのため、日本語がほとんど話せない状態で来日する実習生も多く、N5レベル以下の日本語能力で入国するケースも珍しくありません。入国後に日本語講習(日本語教育)を実施することが義務付けられており、来日後に基礎的な日本語を学ぶ仕組みにはなっていますが、入国後の講習だけでは十分な日本語能力の習得が難しいのが実情です。N5レベルは「基本的な日本語をある程度理解できる」程度で、日常会話も非常に限定的です。そのため、職場でのコミュニケーションには苦労することが多く、業務指示の理解や安全管理の面で課題となるケースが少なくありません。
特定技能制度における日本語能力の要件
一方、特定技能制度では、入国前に日本での生活や業務に必要な日本語能力の証明が求められます。具体的には、日本語能力試験N4以上、または「国際交流基金日本語基礎テスト」への合格が原則として必要です。N4レベルは「基本的な日本語を理解することができる」程度で、簡単な日常会話であれば対応可能な水準です。さらに、介護分野では利用者とのコミュニケーションが重要となるため、より高い日本語能力(日本語能力試験N3以上相当)が求められています。

また、特定技能外国人の多くは、実際にはN4以上の日本語能力を持っているケースが多いです。それは、特定技能の試験準備の過程で日本語学習も並行して行われるためです。特に、技能実習から特定技能に移行する外国人の場合は、すでに日本で数年間生活しており、実践的な日本語能力が身についている場合がほとんどです。
職場でのスムーズなコミュニケーションを重視する企業にとっては、特定技能外国人の方が日本語面でのハードルが低いといえるでしょう。
このように、技能実習と特定技能では、求められる技能水準と日本語能力に明確な違いがあります。技能実習制度は、技術移転を目的としているため、ゼロから教育が必要な「実習生」である上に、入国時点での日本語能力も担保されていないため、育成には非常に時間と労力がかかります。企業は未経験者を段階的に育成していく体制が求められます。
一方、特定技能制度は、人手不足への対応を目的としており、即戦力を期待できる技能水準と、業務や生活に必要なレベルの日本語能力を持つため、人手不足の現場においてもスムーズに受け入れやすい制度です。入国時点で各分野の技能試験と日本語試験(N4以上)に合格していることが求められ、すぐに現場で活躍できる人材を確保できます。
企業は、自社のニーズや育成体制に応じて、どちらの制度が適しているかを判断することが重要です。
受け入れプロセスと支援体制の違い
外国人材を受け入れるには、さまざまな手続きと準備が必要です。この章では、「技能実習」「特定技能」両制度の受け入れプロセスと、受け入れ後の支援体制について比較します。
技能実習の受け入れプロセス
技能実習制度の受け入れプロセスは、監理団体を介する場合、以下のような流れになります。
(1〜2ヶ月)
企業は適切な監理団体を探し、加入手続きを行います。
(1〜2ヶ月)
受け入れ企業と監理団体が協力して、技能実習計画を作成し、外国人技能実習機構(OTIT)に提出します。
(2〜3ヶ月)
監理団体が海外の送り出し機関と連携し、実習生を募集・選考します。企業は面接に参加することもあります。
(1〜3ヶ月)
技能実習計画が認定されたら、入国管理局に在留資格認定証明書を申請します。
(1〜2ヶ月)
在留資格認定証明書が交付されたら、ビザを取得し、渡航準備を進めます。
(約1ヶ月)
入国後、日本語や日本の生活習慣、労働関係法令などの講習を受けます。
講習終了後、ようやく企業での実習が始まります。
特定技能の受け入れプロセス
特定技能制度の受け入れプロセスは、より柔軟でスピーディーです。
(1〜2ヶ月)
企業は登録⽀援機関を通じて⽀援計画の作成や⼈材確保の準備を進めます。
選考した外国人材と雇用契約を結びます。
外国人材への支援計画を作成します。登録支援機関に委託する場合は、支援機関が作成します。
(1〜3ヶ月)
入国管理局に在留資格認定証明書を申請します。
(1ヶ月程度)
在留資格認定証明書が交付されたら、ビザを取得し、来日します。
入国後、オリエンテーションを経て、すぐに就労を開始できます。
このように、技能実習生が実際に企業で働き始めるまでには、6ヶ月から1年程度の期間を要することが一般的です。計画的な受け入れが必要であり、急な人手不足には対応しにくいという課題があります。
それに対し特定技能の場合、技能実習ほどの時間はかかりません。
即戦力が必要な企業にとって、このスピード感は大きなメリットといえるでしょう。
支援体制の違い
| 技能実習 | 特定技能 | |
| 支援の主体 | 監理団体 | 企業(特定技能所属機関)または登録支援機関 |
| 支援の義務 | 監理団体による監査と指導 | 義務的支援(生活・日本語支援、転職相談等)の実施が義務 |
| 支援の内容 | 実習の進捗管理が中心 | 労働者としての定着のための生活、日本語学習、相談対応など多岐にわたる |
受け入れ後の支援体制にも違いがあります。
技能実習制度では、監理団体が実習実施機関(企業)を監督し、技能実習が適正に実施されているかをチェックする役割を担います。監理団体は定期的に企業を訪問し、実習状況の確認や実習生との面談を行います。
また、実習生の生活面でのサポート(住居の確保、生活オリエンテーション、相談対応など)も、主に監理団体が担当します。企業の負担は比較的軽いといえますが、その分、監理団体への監理費用が発生します。
特定技能制度では、受け入れ企業が外国人材への支援を行う義務があります。具体的には、以下のような支援が必要です。
- 事前ガイダンスの提供
- 出入国時の送迎
- 住居確保の支援
- 生活オリエンテーションの実施
- 日本語学習の機会提供
- 相談・苦情への対応
- 日本人との交流促進
- 転職支援(離職時)
- 定期的な面談の実施
これらの支援を自社で行うことが難しい場合は、「登録支援機関」に委託することができます。登録支援機関は、特定技能外国人の受け入れに関する専門知識を持ち、企業に代わって支援業務を行います。
技能実習と比較すると、特定技能では企業がより主体的に外国人材と関わり、支援する体制が求められるといえるでしょう。ただし、それは同時に、外国人材とのコミュニケーションが密になり、職場への定着が促進されるというメリットにもつながります。
在留期間と将来の展望
外国人材を受け入れる際、「どのくらいの期間働いてもらえるのか」「将来的なキャリアパスはどうなるのか」という点は、企業にとっても外国人材にとっても重要な関心事です。この章では、在留期間と将来の展望について比較します。
| 技能実習 | 特定技能 | |
| 在留期間 | 最長5年 (更新の上限あり) | 特定技能1号: 最長5年 (更新の上限あり) 特定技能2号: 在留期間の更新に上限なし (事実上、永続的な就労が可能) |
| 永住権 | 不可 (在留期間が永住権の要件である「10年の在留」にカウントされない) | 特定技能1号: 不可 (在留期間が永住権の要件にカウントされない) 特定技能2号: 可能 (在留期間が永住権の要件である「10年の在留」にカウントされるため、要件を満たせば取得可能) |
| キャリアパス | 原則として日本の技術を学び母国に還元することが目的。在留期間終了後は帰国が基本。 | 特定技能1号: 技能水準を測る試験に合格し、特定技能2号への移行が可能。 特定技能2号: 熟練した技能を持つ者として、永住の道が開ける。家族の帯同も可能。 |
技能実習制度の在留期間
技能実習制度の在留期間は、以下のように定められています。
- 技能実習1号:最長1年
- 技能実習2号:最長2年(1号と合わせて最長3年)
- 技能実習3号:最長2年(1号・2号と合わせて最長5年)
つまり、技能実習制度では、最長でも5年間の在留となります。技能実習3号に移行するには、技能検定3級以上に合格する必要があり、また監理団体や実習実施機関が一定の優良要件を満たしている必要があります。
技能実習3号への移行要件を満たせない場合、技能実習2号修了後(3年)で帰国することになります。実際には、多くの技能実習生が3年で帰国しているのが現状です。
技能実習修了後、いったん帰国してから特定技能1号として再来日することは可能ですが、制度上は「実習を終えて技能を母国に持ち帰る」ことが前提となっています。
特定技能制度の在留期間と更新
特定技能1号の在留期間は、通算で最長5年です。在留期間は1年を超えない範囲で法務大臣が個々の外国人について指定する期間ごとに更新され、通算5年に達するまで更新が可能です。
特定技能2号に移行すると、在留期間の更新に上限がなくなります。3年、1年、または6ヶ月の期間で更新が可能で、要件を満たし続ける限り、半永久的に日本に滞在して働くことができます。
特定技能1号から2号への移行には、より高度な技能試験に合格する必要がありますが、2023年の制度改正により、特定技能2号の対象分野が大幅に拡大されました。現在では、介護分野を除く11分野で特定技能2号への移行が可能となっています。一方で、介護分野は特定技能2号の対象外であるため、特定技能1号から2号へ移行して長期的に働くことはできません。ただし、介護分野には別のキャリアパスが用意されています。特定技能1号として介護現場で実務経験を積み、介護福祉⼠資格の取得や⽇本語能⼒など⼀定の条件を満たすことができれば、「在留資格・介護」に移⾏することが可能になります。「在留資格・介護」は長期的・安定的な就労を前提とした資格であり、在留期間の更新も継続的に行えます。
永住権取得の可能性
外国⼈が⽇本で永住許可を得るためには、原則として「引き続き 10 年以上⽇本に在留」していることが必要とされています。また、そのうちの 5 年以上は、就労可能な在留資格(※技能実習と特定技能 1 号を除く)または居住資格で在留している必要があります。
在留資格「技能実習」は最⻑ 5 年で帰国が前提の制度であり、この段階で永住許可を⽬指す仕組みにはなっていません。技能実習修了後に別の就労資格(技術・⼈⽂知識・国際業務など)や特定技能へ在留資格を変更し、⻑期間在留し続ければ永住許可の条件を満たす可能性はあるものの、これは制度の趣旨とは異なります。
これに対して特定技能制度、とくに特定技能 2 号は、在留期間に上限がなく更新を続けられる点が制度上⼤きな特徴です。特定技能 2 号で継続的に在留し、素⾏善良・独⽴した⽣計などの永住許可基準を満たせば、永住申請が可能となる場合もあります。
このように、特定技能制度は、外国⼈材が⽇本で⻑期的に就労し定着できる制度として位置づけられており、企業にとっても持続的な⼈材確保に結びつきやすい制度構造となっています。
キャリアパスの展望
技能実習制度では、実習生のキャリアパスは限定的です。3年または5年の実習期間を終えたら帰国し、母国で習得した技能を活かすことが想定されています。日本国内でのキャリアアップは制度上想定されていません。
もちろん、技能実習修了後に特定技能1号に移行するという道はあります。実際、特定技能1号外国人の多くは、技能実習からの移行者です。しかし、それは技能実習制度そのもののキャリアパスというよりは、別の制度への移行というべきでしょう。

特定技能制度では、明確なキャリアパスが存在します。特定技能1号として5年間働き、その間に技能を磨き、試験に合格すれば特定技能2号に移行できます。特定技能2号になれば、在留期間の制限がなくなり、より高度な業務を担当し、現場のリーダーや指導者として活躍することが期待されます。
さらに、特定技能2号として長期間日本に滞在すれば、永住権取得の可能性も開けます。家族を帯同し、日本社会の一員として生活することができるのです。
企業の視点から見ると、技能実習生は「3〜5年で帰国する人材」であるのに対し、特定技能外国人は「長期的に戦力として育成・活用できる人材」といえます。人材育成への投資が報われやすく、職場の中核を担う人材として期待できるのが特定技能制度の大きな魅力です。
コストと手続きの実務的な違い
外国人材の受け入れには、さまざまなコストが発生します。この章では、両制度での採用にかかるコストと手続きの実務的な違いを見ていきましょう。
技能実習と特定技能にかかるコストの比較
「技能実習」と「特定技能」の入国までにかかる主なコストは以下の通りです。
技能実習と特定技能の入国までの費用
| コスト項目 | 技能実習(調査平均値※) | 特定技能 (アストミルコープ) |
| 入国前講習に要する費用 | ¥26,008 | ¥0 |
| 健康診断費用 | ¥9,232 | ¥0 |
| 来日する際の初回渡航費 | ¥55,893 | ¥0 |
| 入国後講習に要する費用 | ¥74,258 | ¥0 |
| 入国講習における費用 | ¥59,313 | ¥0 |
| 帰国のための渡航費 | ¥14,307 | ¥0 |
| 一時帰国にかかる渡航費 | ¥9,288 | ¥0 |
| 送出機関に支払う費用 | ¥7,086 | ¥0 |
| 監査・訪問指導費用 | ¥802 | ¥0 |
| その他実習監理に要する費用 | ¥13,183 | ¥0 |
| 一人当たりの平均費用 | ¥343,628 | ¥250,000 |
※技能実習・特定技能とも、勤務期間中は別途費用が発生します。
※「監理団体が実習実施者から徴収する管理費等に関するアンケート調査の結果について/外国人技能実習機構(OTIT)-2022年1月24日」より引用。アンケート対象者数は1972団体、有効回答数は631団体で、有効回答率は約32.0%。
注)技能実習は初回『監理団体の入会費(10,000〜100,000円)』が別途必要です。
「技能実習」は「安い労働力」という誤った認識を持たれがちですが、実際には「特定技能」と比べて総コストが割高になる傾向があります。このコストの違いは、両制度の「目的の違い」に起因する構造的な差異によるものです。
技能実習では、国際貢献という目的に基づき、実習が適切に行われているか監督するための監理団体(組合など)が必須です。この団体に支払う監理費(月額3万~5万円程度)が毎月継続的に発生し、この費用が特定技能に比べて高くなる要因の一つです。また、技能実習では、外国人側の費用負担を防ぐため、受入企業が負担すべき費用が多く設定されています。具体的には、現地送出機関への協力費用、入国前後の義務的な講習費用(実習手当含む)、往復の渡航費(原則受入企業負担)、各種申請手続き費用などが発生し、総額で50万~150万円程度(送出機関や国により変動)になる場合があります。
それに対して特定技能は人手不足解消を目的とした「労働者」の雇用であるため、監理団体は不要です。義務付けられている生活支援を外部に委託する場合、登録支援機関に支援費用(月額2万~3万円程度)を支払いますが、特定技能では⽇本語能⼒や技能⽔準が⼀定の⽔準に達しているため、技能実習のような長期かつ強制的な入国後講習は不要です。また、初期費用は主に採用活動費、行政書士への手続き代行費用、および渡航費ですので、zoom での⾯談を活⽤するなど、オンラインで選考を⾏うことで初期費⽤を抑えることができるでしょう。

「技能実習」と「特定技能」に必要な手続き・報告義務について比較すると以下のようになります。
行政手続きと報告義務
| 技能実習 | 特定技能 | |
| 所要期間 | 6ヶ月〜1年程度 | 2ヶ月〜6ヶ月程度 (国内採用なら最短2ヶ月) |
| 手続きの複雑さ | 非常に複雑で時間がかかる | 国内の技能実習修了者採用なら在留資格変更申請のみ |
| 手続き方法 | 書類ベースが多く、手続きが煩雑になりがち | 中程度オンライン届出システムが整備され利便性が高い |
| 関与する組織 | ・監理団体 ・送り出し機関 ・外国人技能実習機構(OTIT) ・入国管理局 | ・入国管理局 ・登録支援機関(委託する場合) |
| 必要な書類 | ・技能実習計画認定申請書 ・申請者の概要書 ・申請者の誓約書 ・技能実習生の履歴書 ・外国の準備機関の概要書及び誓約書 ・雇用契約書及び雇用条件書 ・技能実習を行わせる理由書 など膨大な書類 | ・申請書 ・技能水準、日本語能力水準に関する書類 ・労働条件に関する書類 ・労働保険、社会保険、税に関する書類 ・支援計画書 など |
| 主な報告義務 | ・実習困難時の届出 ・実習計画の変更認定申請 ・技能実習実施状況報告(定期) ・監理団体から機構への定期報告 ・入管への各種届出 | ・受入れ状況の四半期報告(入管) ・支援実施状況の四半期報告 ・活動状況の届出(契約終了・変更時) ・登録支援機関の定期報告 |
| 報告代行 | 監理団体が多くを代行。ただし企業の協力は必須 | 登録支援機関に委託すれば多くを代行可能 |
| 行政機関のチェック | 外国人技能実習機構による実地検査あり | 主に書面・オンライン中心、実地検査は少ない |
引用:法務省 特定技能ガイドブック、OTIT 外国人技能実習機構「技能実習計画の認定申請」
技能実習の場合、監理団体が多くの報告義務を代行してくれますが、企業も一定の協力が必要です。また、外国人技能実習機構による実地検査が行われることもあり、対応が求められます。
特定技能の報告義務も一定の負担はありますが、技能実習ほど複雑ではありません。また、登録支援機関に委託している場合は、多くの報告業務を代行してもらえます。オンラインでの届出システムも整備されており、手続きの利便性は向上しています。
まとめ
技能実習制度と特定技能制度の最大の違いは、その「目的」にあります。
技能実習は「国際貢献」「技術移転」を建前とし、外国人は「実習生」として位置づけられています。しかし、実態は労働力として活用されており、この建前と実態の乖離が、さまざまな問題を生み出してきました。転職の自由がなく、低賃金で働かされ、人権侵害が発生しやすい構造的な問題を抱えているのです。
一方、特定技能は「人手不足への対応」という明確な目的を持ち、外国人を「労働者」として正面から認めています。転職の自由があり、日本人と同等の待遇が保障され、長期的なキャリア形成も可能です。建前と実態が一致しており、健全な労働環境が整えられています。
2027年4月には、技能実習制度に代わって「育成就労制度」が施行される予定です。育成就労制度は、技能実習の問題点を改善し、人材育成と人手不足対応を両立させる制度として設計されています。
しかし、育成就労制度が始まった後も、特定技能制度は継続します。むしろ、育成就労からのスムーズな移行先として、特定技能の重要性はさらに高まることが予想されます。
特定技能は、日本の労働市場に定着し、今後も発展していく制度です。今、特定技能外国人を受け入れることは、2027年以降も見据えた持続可能な人材戦略といえるでしょう。
特定技能外国人は、制度的な裏付けがしっかりしており、長期的に安心して雇用できる人材です。企業にとっても、外国人材本人にとっても、安定した雇用関係を築ける点が大きな価値なのです。
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