JLPTとJFT-Basicの違いとは?|採用前に知っておきたい日本語能力評価のポイント

外国人材の採用において、日本語能力の把握は欠かせないステップです。特に特定技能や技術・人文知識・国際業務などの在留資格を想定する場合、履歴書や応募書類に記載された「JLPT N3」や「JFT-Basic合格」といった日本語スコアをどのように評価すべきか、悩まれる採用担当者の方も多いのではないでしょうか。

日本語能力評価試験には複数の種類があり、それぞれ測定できるスキルや目的が異なります。今回は、代表的な2つの試験である「JLPT(日本語能力試験)」と「JFT-Basic(日本語基礎テスト)」の違いを解説し、採用現場でどのように使い分け、評価するべきか、実践的な視点からご紹介します。

目次

JLPTとJFT-Basicの概要比較

外国人採用においてよく目にする「JLPT」と「JFT-Basic」。どちらも日本語力を測る試験ですが、その目的や評価軸には大きな違いがあります。

それぞれの試験は開発の背景や評価の目的が異なるため、表面的なスコアの数字だけで優劣を判断するべきではありません。企業がどのような目的で外国人材を採用し、どのような場面で日本語力を必要とするのかによって、適切な評価軸を見極める必要があります。

JLPT(日本語能力試験)とは?

JLPT(Japanese Language Proficiency Test)は、日本国際教育支援協会が主催する日本語能力試験で、語彙・文法・読解・聴解といった「知識型」の設問で構成されています。N1(最上位)からN5(初級)までの5段階に分かれ、合格基準は各レベルごとに設定されています。

JLPTは1984年から開始された、歴史ある日本語試験です。世界90カ国以上で実施されており、年間100万人近くが受験する世界最大級の日本語能力試験として知られています。試験は年に2回(7月と12月)実施され、日本国内だけでなく、海外拠点でも安定して受験できるインフラが整っている点が魅力です。

JLPTの評価指標
レベル認定の目安
N1幅広い場面で使われる日本語理解することができる
N2日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、より幅広い場面で使われる日本語を、ある程度理解することができる
N3日常的な場面で使われる日本語を、ある程度理解することができる
N4基本的な日本語を、理解することができる
N5基本的な日本語を、ある程度理解することができる

JLPTは世界中で受験者が多く、履歴書にも記載されやすいため、企業にとって馴染みのある評価指標です。特定技能ではN4以上が、技術・人文知識・国際業務などではN2〜N1が基準となることが多いです。

ただし、JLPTは「読む・聞く」能力を中心に測定するため、実際の業務で必要とされる「話す・理解する」力が不十分な合格者も見受けられます。

JFT-Basic(日本語基礎テスト)とは?

JFT-Basic(Japan Foundation Test for Basic Japanese)は、国際交流基金が2019年に開発した比較的新しい試験で、特定技能ビザの申請において日本語能力を証明するために活用されています。

JFT-Basicの大きな特長は、日常生活や職場での“実践的な日本語”に重きを置いた試験であるという点です。出題はCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)に基づいて構成され、レベルA2が特定技能での受入れ基準とされています。

CEFRの6段階
段階CEFR能力レベル別に「何ができるか」を示した熟達度一覧
Proficient User
【熟達した使用者】
様々な状況で言語を意のままに用いることができ、場面に合った言葉づかいや文体を選択できる。
C1聞いたり読んだりした、ほぼ全てのものを容易に理解することができる。いろいろな話し言葉や書き言葉から得た情報をまとめ、根拠も論点も一貫した方法で再構築できる。自然に、流暢かつ正確に自己表現ができる。
C2いろいろな種類の高度な内容のかなり長い文章を理解して、含意を把握できる。言葉を探しているという印象を与えずに、流暢に、また自然に自己表現ができる。社会生活を営むため、また学問上や職業上の目的で、言葉を柔軟かつ効果的に用いることができる。複雑な話題について明確で、しっかりとした構成の詳細な文章を作ることができる。
Independent User
【自立した使用者】
日常生活や学習、仕事などで必要な言語を理解し、ある程度流暢に自分を表現することができる
B2自分の専門分野の技術的な議論も含めて、抽象的な話題でも具体的な話題でも、複雑な文章の主要な内容を理解できる。母語話者とはお互いに緊張しないで普通にやり取りができるくらい流暢かつ自然である。幅広い話題について、明確で詳細な文章を作ることができる。
B1仕事、学校、娯楽などで普段出会うような身近な話題について、標準的な話し方であれば、主要な点を理解できる。その言葉が話されている地域にいるときに起こりそうな、たいていの事態に対処することができる。身近な話題や個人的に関心のある話題について、筋の通った簡単な文章を作ることができる。
Basic User
【基礎段階の使用者】
身近なことや馴染みのあるトピックであれば、日常生活で使われる言語を理解し、用いることができる
A2ごく基本的な個人情報や家族情報、買い物、地元の地理、仕事など、直接的関係がある領域に関しては、文やよく使われる表現が理解できる。簡単で日常的な範囲なら、身近で日常の事柄について、単純で直接的な情報交換に応じることができる。
A1具体的な欲求を満足させるための、よく使われる日常的表現と基本的な言い回しは理解し、用いることができる。自分や他人を紹介することができ、住んでいるところや、誰と知り合いであるか、持ち物などの個人的情報について、質問をしたり、答えたりすることができる。もし、相手がゆっくり、はっきりと話して、助けが得られるならば、簡単なやり取りをすることができる。

試験はコンピュータ上で実施され、問題はすべて選択式。内容は「あいさつ」「指示の理解」「買い物・交通機関の利用」「電話応対」など、実生活に直結するものばかりです。また、試験は毎月複数回実施されており、JLPTと異なり、タイミングを選ばずに受験できる利便性の高さも魅力です。

JFT-Basicは、知識よりも“活用力”を評価することを目的としており、特にサービス業や介護・宿泊・飲食業など、現場でのやり取りが中心となる職種との相性が非常に良い試験です。短期間で合格を目指しやすく、学習意欲の高い外国人材のモチベーション向上にもつながる試験といえるでしょう。

採用現場での使い分けポイント

JLPTとJFT-Basicは、それぞれに特性があるからこそ、職種や現場のニーズに応じた「使い分け」が重要になります。下記の表は、JLPTとJFT-Basicの特徴的な部分を比較したものです。この内容に基づいて、JLPTとJFT-Basicをどう使い分けて評価していくべきかを考えていきましょう。

JLPTが適したケース:技術・事務職

JLPTは文法や読解力が求められるホワイトカラー職に適しており、技術職や事務職、日本語での文書作成やメール対応が求められる業務には特に有効です。また、JLPTのスコアは企業や自治体でも広く認知されているため、書類選考や在留資格の審査にもスムーズに対応できる点がメリットです。

JFT-Basicが適したケース:現場・接客系

一方、JFT-Basicは、介護・飲食・宿泊・製造など、現場での動きが中心となる業務や、コミュニケーションが重視される職種で強みを発揮します。特に、日々のやりとりの中で「即時理解・即時対応」が求められる職場では、JFTで測れる“実用会話力”が非常に重要です。出題内容が現実の業務とリンクしているJFT-Basicに合格している人材であれば、採用後のミスマッチ防止や早期離職の回避にもつながります。

JLPT
日本語能力試験
JFT-Basic
日本語基礎テスト
主催(公財)
日本国際教育支援協会
(独)
国際協力基金
判定目的学術的
日本語能力
実用的
日本語能力
出題内容文法、語彙
読解、聴解
会話、生活語彙
状況対応
レベルの
指標
N1〜N5
(5段階)
CEFR
A2レベル
特定技能の
合格基準
N4以上で
申請可能
合格で申請可能
傾向「読む」「聞く」
など
学業的重視
「話す」「聞く」
「読む」など
実用重視

採用スケジュールと試験頻度の違い

また、JLPTは年2回しか受験機会がないため、採用スケジュールに影響を与える可能性があります。一方JFT-Basicは毎月実施されているため、柔軟なスケジュール対応が可能です。この違いも、採用計画を立てる上で大きな判断材料になります。

採用成功のカギは「試験結果」よりも「現場での適応力」

外国人材の採用において、日本語試験の合否やスコアはあくまで「目安」に過ぎません。
真に重要なのは、現場で求められるスキルや価値観にどれだけフィットするか、つまり“適応力”です。

JLPT N1合格=即戦力、とは限らない

初めて来日し勤務を始めた特定技能外国人の多くは、JFT-Basicの合格者です。当初は、JFT-Basicよりも、JLPT N3レベルの方が即戦力になると想定していましたが、JFT-Basic合格者でも職場にスムーズに適応できたという報告を多くいただいています。

ご注意いただきたいのは、漢字語圏東アジア出身者で、高いJLPTレベルを持っている場合です。
筆記試験には強いものの、実際のコミュニケーションとなると、「N1(最上位)に合格しているのに意思疎通がうまくできない」というケースも稀にあります。話す・聞く力に課題があるという例が少なくなく、「N1合格者なのに意思疎通が難しい」と感じるケースもあります。これは、JLPTが筆記重視の設計であることが一因です。

とくに介護や飲食、製造など、日々の業務で“報告・連絡・相談”が必要な職場では、「聞いて理解し、適切に返答できるか」という実践的なコミュニケーション力こそが、定着率や戦力化に直結します。

面接時のコミュニケーション確認が必須

採用時には、面接で日本語による会話を必ず行い、指示に対する理解力、返答のスムーズさ、言い換えへの対応などを確認することが重要です。実際に話してみて初めて、履歴書では見えない“現場での適応力”が見えてきます。

採用する側にとっては、履歴書上のスコアや資格に安心してしまうのではなく、実際にどんなコミュニケーションが取れるか、面接時に会話力を“対面で確認”ことが不可欠です。

また、採用後のフォローアップとして、日本語研修やOJTの中に「現場対応のための日本語力育成」を含めることで、実務能力の底上げも可能です。このように、入社後の成長ポテンシャルも視野に入れた評価が、安定的な戦力化のカギとなるでしょう。

面接時に確認すべきポイント
  • 業務説明に対して適切な返答ができるか
  • 簡単な口頭指示に従って行動できるか
  • 敬語が使えるか
  • 状況を想定したロールプレイ対応

まとめ

外国人材採用においては、JLPTやJFT-Basicといった日本語能力試験のスコアだけに頼るのではなく、職場の実態に即した評価軸が重要になります。特に、現場でのコミュニケーションや対応力といった「実用的な日本語力」は、書類上では判断しきれない部分です。

本記事でご紹介したとおり、JLPTとJFT-Basicにはそれぞれの強みと限界があります。企業としては、採用職種や業務内容を踏まえて、適切な試験を選択しながら、試験スコアだけでなく「現場対応力」「学習意欲」「成長可能性」といった多面的な視点で人材を評価することが求められます。

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