特定技能外国人採用の秘訣とは?都丸農園の人手不足解消事例

「人手が足りない、求人を出しても思った人が来ない…」
「今いる人に辞められたら困るから、思ったことを言えない…」

人手が不足していると、本来不要な人材にまで気を使わなくてはならず、フラストレーションを抱えることになってしまいます。

でも…、本当にそれでいいのだろうか…

今回ご紹介する都丸農園(現:トマルファーム)の都丸さんも、以前は人材についてのお悩みを抱えていたそうです。

このインタビュー記事は、人材不足に悩む事業者さんに役立つ内容となっています。
この記事が「あなたの会社の人手不足解消」につながれば幸いです。

目次

日本の人手不足は深刻な状態

日本の労働力人口は減少を続け、2030年には644万人の人手不足になると予想されており、すでに多くの産業で人手不足が続いています。

人手不足予測
引用「パーソル総合研究所」より

そこで日本政府は、2019年4月に特定技能制度を制定。
(特定技能制度とは、国内人材を確保することが困難な状況にある産業分野において、一定の専門性・技術を有する外国人を受け入れることを目的とする制度)

2024年6月時点で、251,747人の特定技能外国人が登録。

特定技能は日本企業の人手不足解消の救世主になると予想されています。

出入国管理庁より

「外国人には頼らない。日本人でやっていく」

もしあなたが経営者なら、そう考えているのかもしれません。
今回ご紹介する都丸農園の都丸さんも、以前は同じように考えていたそうです。しかし・・・

これまで日本人採用にこだわってきた都丸さんでしたが、3年前事業拡大のタイミングで日本人の採用ができなかったため、やむを得ず外国人を採用することに。
そこではじめて外国人の仕事ぶりを目の当たりにし、それから外国人雇用への考え方が変わっていったそうです。

そんな都丸農園を2日間取材し

  • 特定技能外国人の日本語力や仕事ぶり
  • 外国人の日本での生活スタイル
  • 日本人スタッフとのコミュニケーション
  • 若い優秀な人材を採用するための求人のコツ

など、人手不足解消のための様々なノウハウをお聞きしました。

現在、特定技能と技能実習あわせて7人の外国人が勤務

都丸農園 Instagramより

群馬県渋川市(人口7万4千人)で、レタス農園(52ha)を経営する都丸さんは、10年前に農業未経験で独立されました。
最初の数年間は、事業も採用もうまくいかず、雹害の被害により一夜で500万円以上の売上を失ったこともあるという。

そんな試練も乗り越えて、現在は27名のスタッフとともに都丸農園を経営されています。

—— はじめまして。この度は取材へのご協力、ありがとうございます。
今日は色々とお聞きしてもよろしいですか?

都丸さん:はい、何でも聞いてください。

—— ありがとうございます。では早速、
人手不足で悩む農業事業者が多いなか、都丸さんはどうやって人を集めているのですか?

都丸さん:以前は友達や近所の主婦の人などに声をかけていましたが、なかなか集められませんでした。

いまはハローワークと農業求人サイトと派遣会社と登録支援機関、あと農業の専門学校にも求人を出しています。
それぞれ集められる人の属性が違いますので、求人先は目的によって使い分けています。

—— ハローワークではいい人が採用しにくいと聞きますが、ハローワークから応募はきますか?

都丸さん:非正規雇用(パートやアルバイト)はきますよ。平均年齢は高いですけど。

—— そうなのですか?!私の地元では人がいない…、って嘆いていますが
人を集めるために、なにか求人のコツがあればお聞きしてもいいですか?

都丸さん:はい。うちの農園の場合は、4月から忙しくなるので、ハローワークでは1~3月末頃まで募集します。

ハローワークで応募される方は平均年齢が高く50歳以上の方がほとんどで、80歳のおばあちゃんが来られたこともありました。さすがに丁重にお断りしましたけど。

あと、若い人を長期で採用するためにインスタも活用しています。職場の雰囲気が少しでも伝わるようにと。
新人のスタッフもインスタを見たと言ってくれましたね。

—— 採用のためにいろいろ努力されているんですね。
都丸農園さんは今年で10年目とのことですが、求人は最初からうまくいきましたか?

都丸さん:いいえ。最初の5年くらいはかなり苦労しました。ある事がきっかけになり、そこから変わることができました。

—— ある事と言われると気になります(笑)お聞きしてもいいですか?

都丸さん:はい。長くなるかもしれませんよ(笑)

以前は人手に困っていたこともあり、同級生であり飲み仲間でもある友人を数名雇用していました。彼らとは、もともと友人なのでプライベートで仲が良かったのですが、一緒に仕事を始めると仲間内でいろいろな意見の違いが生まれるようになりました。
学生時代は同じ立場だったのが、仕事上では全員が横並びではなく、上司と部下の関係になるので、その関係性がうまく築けない友人もいたんですね。

私は経営者でもあるし、当時は人手が不足していたので「辞められると困る…」と、仲の悪くなった友人の両方にいい顔をしていました。あとになって気づきましたが、それが良くなかったです。

人数の少ない職場で仲の悪い人たちが働いていることで、周りの社員たちが居づらくなっていき、良い社員が辞めていきました。
辞めて欲しくない人が辞めていく…、そこからしんどい時期が続きましたね…。

でも、このことがきっかけで「誰にでもいい顔をしていても何も解決しない。自分が変わらないといけない。」と、気づけました。

貴重な体験をお話しいただき、ありがとうございます。

—— 農園で1番大変な仕事は、どのような仕事ですか?

都丸さん:早朝の収穫作業ですね。レタスとキャベツがあるのですが、段ボールに詰め込むと15キロくらいになります。それを一日で500個、多いときは1000個出荷しますので、かなり重労働と言えます。

去年入った新人で元砲丸投げ選手の“まっちゃん”という男の子がいるのですが、まっちゃんも「早朝が1番ツライ…」といってました。

この日は早朝5時からレタスの収穫。早いときは3時からすることもあるそう。

—— スタッフ全員が収穫作業をされいるのですか?

都丸さん:いえ、基本的には私を含めたフルタイムのスタッフが作業をします。外国人スタッフ7名にも収穫作業をしてもらっています。

—— そうなんですね。いま働いている外国人スタッフには、色々な国の方がおられるようですが、文化の違う外国人の採用に抵抗はなかったですか?

都丸さん:元々は「日本人だけ雇用する」って変なこだわりを持っていましたが、そうも言ってられない状況になりました。いざ外国人の方を採用してみると、日本語はうまいし、よく働いてくれるので、良い意味で思っていたのと違いました。
それが分かってからは積極的に外国人の方を採用していて、今までハンガリー、台湾、タイ、インドネシアなど合わせて12名の方を採用しています。

—— 雇ってみたら(思っていた)心配はなかったんですね。国によっての違いとか、なにか感じておられますか?

都丸さん:一概には言えませんが比較的、インドネシア人の方は日本語がうまいと思います。特に、今年4月から働いてもらってる特定技能のナルコとスルリは、他の外国人に比べても日本語がうまいですね。

—— 在留資格で違うのですか?特定技能と技能実習生、日本語力に差がありますか?

都丸さん:はい、特定技能の方が日本語はうまいと思います。これまで私が雇用した12名では、そう感じています。

「特定技能外国人」の日本語能力

↓実際の取材動画↓をご覧下さい(8分30秒)

群馬県の都丸農園さんに2日間取材した

↓ここから動画の文字起こし

—— 外国の人に切り替えを考えるきっかけは何だったんですか?

都丸さん:それはもう…、この地域の農業は衰退してて畑が空きまくってて、ちょうど規模拡大に踏み込むタイミングだったんですよね。まあ、そんなにうまく日本人雇えないの必然というか、お願いせざるを得ないような状況でしたね。

—— 外国人材を採用したことで、(都丸さんが)プラスに感じていることはありますか?

都丸さん:ありますあります。もちろん。
事業で言えば、彼らを雇う前は、日本人の若い子というのは入ってこないんですよ。
人づてで同級生とか。求人出しても、若い子は大企業を目指すとかそういうんですから。

(来る人と言えば)おじいちゃんやおばあちゃんとか、スキルも体力的にも低い人が中心なわけですよ。
(外国人は)言葉と資格を取得するのに時間がかかったりするけど、雇ってしまえば日本人より働く方はいっぱいいますから。

そんな中で若い有能な方が外国から来てくれるのは助かってます。だから、どこの国が良いとかというのはないです。

ただね、年数が限られていることだけは、ちょっと残念なところでありますけれども…。
(外国人の方を)頼りにしてますね。

都丸農園では、みんなが作業に集中できるように音楽などを聞きながら作業することを推奨している

—— 外国人材が社内にいることで、(スタッフに)プラスに働くことはありますか?

都丸さん:ありますよ。特に新入社員の子。彼らはまっさらな状態で入ってくるんで(新人にとって)良い鏡です。価値観も全然違います。「お金とは?生きがいとは?」

ここからは、今年4月から都丸農園で働いている「特定技能のナルコさん(インドネシア)」にお話をお伺いします。
—— 都丸農園での勤務はどうですか?

ナルコさん:都丸農園、はじめて来たときに、元々私インドネシアから農業をやりたいと思ってきましたから、最初来た時から楽しいなと思ってます。いろいろな経験が学びたいなと思ってます。

—— 社長は優しいですか?

ナルコさん:めちゃくちゃ優しい。お米もらいました。

都丸さん:逆に(ゴマすって)ね。一生懸命頑張ってくださいっ!つっています。

—— 仕事慣れるの大変でしたか?

ナルコさん:そうですね。朝、早出。1ヶ月くらいでやっと慣れました。カラダ痛いーって、筋肉痛で。

都丸さん:最初大変だよね。肉体労働だからね。

—— 日本人の方達と一緒に働くことについては、どうですか?困ることはありますか?

ナルコさん:困ることは、ほんと無いです。コミュニケーションとかちゃんと取れるから。
日本語を上手になりたいから、日本人と一緒に仕事するの、やっぱり最高です。

早朝のレタス積込作業の時も、日本語でコミュニケーションが取れる

—— ほんと、日本語が上手ですね。

ナルコさん:いえいえ。

都丸さん:来たときから上手でしたけど、どんどん上手くなってます。夜、勉強してますからね。

—— 彼を採用する決め手になったのは、日本語が上手いことやコミュニケーションスキルが高いところですか?

都丸さん:そうですね。ナルコの場合は、面接からばりばり喋っていたので。(うちに来て)欲しいなーと思いました。
日本語がうまいと仕事してて楽ですね。微妙なニュアンスを分かってもらえる。日本語が分からないと、畑の移動とか「右折とか右いけ」って分からないので。

—— (日本人スタッフさんとは)みんなと仲良くできていますか?

ナルコさん:みんな仲いいです。優しい。若い人とかサポートの人とか、差し入れあるし。(みんな)優しい。
都丸農園は凄いですね~。すごいお世話になりました。

都丸さん:お世話になった?笑。帰るときに言ってくれよ(笑)

スタッフさんに「外国人と一緒に働くこと」についてお聞きした

—— 普通に会話できますか?困ることはありませんか?

スタッフさん:普通にしゃべれますよ、冗談とかも言います。困ることはありません。

2年目の藤井くん(左)と特定技能者のスルリさん(右)レタス収穫後、朝食の風景

——  都丸農園さんで働く外国人の方をたくさん見てきたと思いますが、外国人の方の働き方はどうですか?

お二人は、今までたくさんの外国人スタッフと働いてこられたそう

スタッフさん:みんなすごく真面目で、一生懸命働く方が多いなぁと思います。

—— 「正直、やりにくい」と思うことはありますか?

スタッフさん:意外にと言葉もちゃんと学んで来ているので、そんなに困らないですよ。普通の日本人と同じ感覚で仕事してます。
みんな飲み込み早いし、働き者だから。素直に聞いてくれますし、楽しくやってます。

以前働いていた外国人スタッフとは、いまでも連絡を取り合うほど仲が良い

—— 外国人だからといって、まったく抵抗はないですか?

スタッフさん:うん、そうですね。最初(3年前)は、言葉とか違うのかなーとか緊張したけど、お互いに慣れてきますよ。
毎年毎年入ってこられるんで、次はどんな子かね?みたいな感じで、楽しくみんなでやってます。

意外と、みんな明るいんですよね。「おはよ~」とか言ってくれるし、日本語も通じるし。みんなすごい働き者です。
日本に来て、車も運転するし、日本語も喋るし、多分みんな優秀な方たちなんだなぁと思ってます。

動画文字起こし、ココまで↑

都丸農園には、どの国とかの違い関係なく「誰もが楽しく働きやすい環境」がありました。

—— 取材協力 ——
■都丸農園
・代表 都丸悟さん
・特定技能 ナルコさん(インドネシア)
・特定技能 スルリさん(インドネシア
・都丸農園の皆さん

■外国人材登録支援機関「株式会社アストミルコープ」
・代表 武田雄己彦さん
・担当 土肥さん

【補足情報】
インドネシア人の日本でのライフスタイルの違いについて

都丸農園さんには、インドネシア人の方がお二人いました。
インドネシアといえばイスラム教ですが、「崇拝・豚肉・酒」などライフスタイルや宗教への考え方は人によって違いがあるようです。

例えば
ナルコさんはアルコールを飲むけど、スルリさんは飲まない。
ナルコさんは休みの日買い物など遊びにいくけど、スルリさんはお祈りにいく。

「食べ物や崇拝」への考え方は強制ではなく個人の自由。
例えば、同じ家族の中でも「食べる人/食べない人」など、分かれることもあるそうです。

※素材使用許可を頂いたうえ掲載いたしております。

外国人雇用をお考えの方に外国人雇用ガイドブックを無料プレゼントしています。


特定技能外国人を雇用する際の流れ

特定技能外国人を採用する場合、以下の流れに沿って進めていきます。
これらの煩雑な手続きは、自分でやることもできるし、登録支援機関(株式会社アストミルコープなど)に委託もできます。※法務省に登録している機関に限る。抹消済みは除く。

自分でやる場合の流れは、下記の通りです。

※支援計画について -
1号特定技能外国人を受け入れる事業者は、当該外国人が活動を安定的かつ円滑におこなうことができるようにするための職業生活上、日常生活上または社会生活上の支援の実施に関する計画を作成し、当該計画に基づいて支援をおこなわなければなりません。 ー 引用「出入国在留管理庁」より

これから外国人雇用を検討する方へ

外国人を採用するためには、先述の流れで手続きを進める必要があります。
はじめての場合は、これら煩雑な手続きを自分でおこなうのは大変です。
そこで、外国人雇用についてまとめた「外国人雇用ガイドブック」をご用意しました。

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「外国人雇用ガイドブック」著者紹介

外国人材登録支援機関
株式会社アストミルコープ

代表 武田雄己彦 Yukihiko Takeda
(1968年大阪市生まれ)

2003年にリクルート退社後ベトナムに渡り、600人以上の人材を日本企業に紹介。
2016年にはアジア・ヨーロッパの親日国の教育機関と連携。2022年11月現在まで約19年に渡って、世界の優秀な人材と日本企業とのマッチングを支援している。

【活動/セミナー・講演実績】

・ハノイ工科大学との共同就職支援事業「AHRPベトナム」主宰(2011〜2014年)
・早稲田大学ベトナム総合研究所 招聘研究員(2011年〜19年)
・公益財団法人横浜企業経営支援財団「国際展開アドバイザー」(2013年〜現職)
・Japan Festival in Vietnam経済交流シンポジウム(ハノイ市)
・NPO法人アジアITビジネス協議会
・ハノイ工科大学・ベトナムソフトウエア協会主催「HRシンポジウム」
・社団法人電子情報技術産業協会
・一般社団法人 組込みシステム技術協会/JASA
・株式会社リクルート ビューティワールド総研
・東アジア・ASEAN経済研究センター(ERIA)日本貿易振興機構(JETRO)
・公益財団法人 横浜企業経営支援財団
他、行政機関、中小企業団体等での講演実績多数

【活動/セミナー・講演実績】

・ハノイ工科大学との共同就職支援事業「AHRPベトナム」主宰(2011〜2014年)
・早稲田大学ベトナム総合研究所 招聘研究員(2011年〜19年)
・公益財団法人横浜企業経営支援財団「国際展開アドバイザー」(2013年〜現職)
・Japan Festival in Vietnam経済交流シンポジウム(ハノイ市)
・NPO法人アジアITビジネス協議会
・ハノイ工科大学・ベトナムソフトウエア協会主催「HRシンポジウム」
・社団法人電子情報技術産業協会
・一般社団法人 組込みシステム技術協会/JASA
・株式会社リクルート ビューティワールド総研
・東アジア・ASEAN経済研究センター(ERIA)日本貿易振興機構(JETRO)
・公益財団法人 横浜企業経営支援財団
他、行政機関、中小企業団体等での講演実績多数

【著書】
「働き手のグローバル化がビジネスチャンスをつくる」
Amazon Kindleランキング 8部門(経済・ビジネス)1位獲得