現在の日本社会では、出生率の低下により毎年50万⼈の働き⼿が減少しており、年々人手不足が深刻化しています。
多くの業界が休業や事業休止等の大打撃を受けたコロナ禍を経ても、有効求⼈倍率は1倍を上回っている状況で、アフターコロナの経済環境下の今後、この求⼈環境が好転するということはあまり期待できないでしょう。
そんな中、人手不足を救う新たな制度として「特定技能制度」が注目されています。
しかし、経営者の方の中には、特定技能外国人の採用を考えていてもなかなか踏み切れないという方もいらっしゃるでしょう。
そこで今回は、在留資格「特定技能制度」についての詳細や、特定技能外国人を採用するためのステップ、特定技能と技能実習の違いをお話しします。
在留資格「特定技能制度」について
「特定技能制度」とは、⼈材不⾜が叫ばれている14の業界を対象に、2019年に新設された在留資格制度です。
定義としては、⽇本国が⼈⼿不⾜で困っている分野(特定産業分野)で即戦⼒として就労可能で、「ある程度の技能」と「ある程度の⽇本語⼒」を持った外国⼈労働者です。
特定技能外国人には「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類があり、それぞれ対象の分野や在留期間が異なります。
特定産業分野について
現時点で、特定技能外国人を受け入れることができる特定産業分野は以下の通りになっています。
特定産業分野 | 分野所管 行政機関 | 従事する業務 | 試験区分 | |
---|---|---|---|---|
1 | 介護 | 厚労省 | これに付随する支援業務(レクリエーションの実施、機能訓練の補助等) ※訪問系サービスは、早ければ2025年度中にも解禁される見通し | ・身体介護等(利用者の心身の状況に応じた入浴、食事、排泄の介助等)のほか、1試験区分 |
2 | ビルクリーニング | 厚労省 | ・建築物内部の清掃 | 1試験区分 |
3 | 素形材産業 | 経産省 | ・ダイカスト ・めっき ・機械保全 ・アルミニウム悶極酸化処理 ・塗装 | ・鋳造 ・金属プレス加工 ・仕上げ ・溶接 ・鍛造 ・工場板金 ・機械検査13試験区分 |
4 | 産業機械製造業 | 経産省 | ・機械検査 ・プリント配線板製造 ・工業包装 ・ダイカスト ・工場板金 ・機械保全 ・プラスチック成形 ・機械加工 ・めっき ・電子機器組立て ・金属プレス加工 | ・鋳造 ・塗装 ・仕上げ ・電気機器組立て ・溶接 ・鍛造 ・鉄工18試験区分 |
5 | 関連産業 | 電気・電子情報経産省 | ・機械保全 ・プラスチック成形 ・工場板金 ・電子機器組立て ・塗装 ・めっき ・電気機器組立て ・溶接 | ・機械加工 ・仕上げ ・プリント配線板製造 ・工業包装 ・金属プレス加工13試験区分 |
6 | 建設 | 国交省 | ・電気通信 ・トンネル推進工 ・鉄筋施工 ・建設機械施工 ・鉄筋継手 | ・型枠施工 ・土工 ・内装仕上げ/表装 ・左官 ・屋根ふき ・コンクリート圧送11試験区分 |
7 | 造船・舶用工業 | 国交省 | ・溶接 ・仕上げ ・塗装 ・機械加工 ・鉄工 ・電気機器組立て | 6試験区分 |
8 | 自動車整備 | 国交省 | ・自動車の日常点検整備、定期点検整備、分解整備 | 1試験区分 |
9 | 航空 | 国交省 | ・航空機整備(機体、装備品等の整備業務等) | ・空港グランドハンドリング(地上走行支援業務、手荷物・貨物取扱業務等)2試験区分 |
10 | 宿泊 | 国交省 | ・フロント、企画・広報、接客、レストランサービス等の宿泊サービスの提供 | 1試験区分 |
11 | 自動車運送業 | 国交省 | ・トラック、タクシー、バスの運転、運転に付随する業務全般 | 3試験区分 |
12 | 鉄道 | 国交省 | ・軌道整備・車両整備・電気設備整備・車両製造・運輸係員 | 5試験区分 |
13 | 農業 | 農水省 | ・畜産農業全般(飼育管理、畜産物の集出荷・選別等) | ・耕種農業全般(栽培管理、農産物の集出荷・選別等)2試験区分 |
14 | 漁業 | 農水省 | 水産動植物の採捕、漁獲物の処理・保蔵、安全衛生の確保等) ・養殖(養殖資材の制作・補修・管理、養殖水産動植物の育成管理、 養殖水産動植物の収穫・処理、安全衝生の確保等) | ・漁業(漁貝の制作・補修、水産動植物の探索、漁貝・漁労機械の操作、2試験区分 |
15 | 飲食料品製造業 | 農水省 | ・飲食科品製造業全般(飲食料品(酒類を除く)の製造・加工、安全衛生) | 1試験区分 |
16 | 外食業 | 農水省 | ・外食業全般(飲食物調理、接客、店舗管理) | 1試験区分 |
17 | 林業 | 農水省 | ・育林・木材生産作業 | 1試験区分 |
18 | 木材産業 | 農水省 | ・木材加工 | 1試験区分 |
尚、日本政府は2024年3月29日に、特定技能1号に「自動車運送業」「鉄道」「林業」「木材産業」の4分野を新たに追加し、既存分野でも受け入れ対象業務を拡大しました。
今後、拡大される分野や業務での受け入れのために、必要な省令の改正が進められます。
これにより、日本の人手不足を支える労働力として、特定技能外国人がますます注目が高まっていくでしょう。
在留資格「特定技能」の特徴
在留資格「特定技能」は、「技能実習」とは異なり「労働」を目的としているため、下記のような特徴があります。
特定技能外国人を採用するには
特定技能外国人を採用するには、受け入れ準備、採用活動、在留資格申請、および労働環境の整備というステップを踏む必要があります。
さらに受け入れ後も、継続的な生活の支援や報告書の作成、在留資格の更新など、さまざまな手続きや書類の作成などが待ち構えています。
1. 受け入れ準備
特定技能外国人を受け入れる企業は、適切な事業所であるという認可を受ける必要があります。
特定技能制度で認められている分野であるかどうかはもちろん、労働基準法や安全衛生法の法令を遵守していることの他、細かい要件を満たしている必要があります。
また、特定技能外国人を受け入れるための支援計画(仕事面でのサポート、住居確保、日常生活に必要な手続き、日本でのルールやマナー、日本語を学習のための情報提供や日本人と交流する機会の提供)を画策し、計画を実施するための支援体制を整備する必要があります。
2. 採用活動
受け入れの準備が整ったら、採用活動を行います。
採用する外国人労働者は、特定技能評価試験、日本語能力試験に合格しているかどうかに注意しなければなりません。
また、特定技能外国人を募集する際、給与や勤務時間・福利厚生などの待遇面は、日本人の職員と同じでなければなりません。
3. 在留資格の申請
外国人の採用が決定したら、出入国在留管理庁に「在留資格認定証明書」を申請します。
必要書類には、雇用契約書、技能試験合格証明書、日本語能力試験合格証明書、支援計画書などが含まれます。
申請した証明書が交付されたら、外国人はそれを持って日本の大使館または領事館でビザを申請します。
4. 入国と雇用手続き
採用した外国人が日本に入国する際には、在留資格認定証明書とビザを提示します。入国後、在留カードが発行されます。
入国が無事済んだら、改めて労働条件を確認した上で正式な雇用契約を行います。
5. 労働環境の整備
特定技能外国人を受け入れる企業は、外国人が安定して働けるように、職場環境だけでなく生活面でも全面的にサポートします。
具体的には、住居の手配や住民登録や銀行口座の開設といった手続きのサポート、日本での生活や職場でのルールについてレクチャーなどです。
6. 継続的なサポート
特定技能外国人に対するサポートは、最初のレクチャーだけではなく、継続的に行う必要があります。
例えば、定期的に面談を実施し、生活面や仕事面での問題点や悩みの早期に対処します。
また、日本語教室や学習教材についての情報提供や日本人との交流の機会を提供します。
7. 在留資格の更新
在留資格の期限が近づいたら、更新手続きを行います。必要書類を準備し、出入国在留管理庁に申請します。
これら全て自社で準備することを考えると負担が大きく、特定技能外国人を採用するのはハードルが高いと感じるかもしれません。
しかし、これらは全て自社で行う必要はなく、「登録支援機関」に委託することで自社の負担を軽減することができます。
登録支援機関は、特定技能外国人が日本で安定した生活と労働環境を得られるように、総合的な支援を提供する専門機関です。
企業はこれらの機関を活用することで、特定技能外国人の受け入れとサポートを円滑に行うことができます。
株式会社アストミルコープは、海外人材採用支援20年の実績がある登録支援機関です。
当社にご依頼いただければ、人材の採用業務と登録支援業務の両面でサポートいたしますので、下記のようなシンプルなフローで特定技能外国人を受け入れることができます。
特定技能外国人の受け入れの流れとアストミルコープの支援
特定技能外国人と技能実習生の違い
「特定技能」と名前の似た在留資格に「技能実習」がありますが、この2つは特性が全く異なる別のものです。
ここでは、間違いやすい「特定技能」と「技能実習」の違いを比べて見ましょう。
特定技能 | 技能実習 | |
---|---|---|
目的 | 日本の人手不足解消 | 国際貢献のための技術移転 |
受け入れ対象 | 即戦力となる人材 | 未経験者 |
日本語能力 | 「日本語能力検定 N4」以上合格 | 不要 |
人数制限 | 制限がない (介護と建設は日本人の従業員数以内に制限) | 従業員数に対する制限あり |
持続性 | 長期的 | 一時的 |
業務内容 | 業務範囲が広い | 専門的な内容も含め、指定された作業以外は不可 | 技術習得のための実習が中心で、
処遇 | 日本人と同じ待遇 | 最低賃金でも許可される |
技能実習は「労働」ではなく「実習」であるため、都道府県の最低賃金で働き、人事評価や賞与はありません。一方、特定技能は、日本人と同じ待遇を提供することが前提で、実績や評価が直接待遇に反映されます。
したがって、適切に人事評価を行い、待遇を改善することができれば、労働者の定着や生産性の向上につながり、トラブルも減少することが期待できるため、結果的に経営合理化を促進させることにつながるでしょう。
日本政府は、アメリカ国務省の人身取引監視対策部から指摘を受けている「技能実習」を徐々に「特定技能」に変えていく意向があり、今後はこちらが主流になると考えられます。
まとめ
特定技能外国人は、これからの日本の労働力不足を救う画期的な制度です。
制度改正により対象分野も広がっていることから、さらに注目されていくでしょう。
しかし、初めて特定技能外国人を採用する企業にとっては、不安に感じることが多いと思います。
実際に自社で全て行うとなると手続きや手配の負担も大きいため、経営者の方の中には、外国人採用に興味はあるが非常にハードルが高く諦めている方も多いのではないでしょうか。
そんな方は、ぜひ一度株式会社アストミルコープにお問合せください。
無料のオンラインでの個別相談も行っておりますので、なかなか聞けない疑問や悩みもお気軽にご相談いただけます。
海外人材採用支援20年の専門家が、特定技能制度の詳しい情報や各国の外国人の特徴などもお話させていただきます。