- 介護
2026.03.15
ミャンマーからのお二人、とても楽しく意欲的に勤務されており、職場内では積極的にコミュニケーションをとる等活発です。
ミャンマー出身特定技能スタッフに聞く
「日本の介護現場で働くリアル」
― 認知症ケアの最前線で活躍する、20代ミャンマー人スタッフ2名の声 ―
「日本人の応募が集まらない」「夜勤や早番を担える若い人材が欲しい」——介護業界における人手不足は、全国の介護施設にとって深刻な課題であり続けています。
その一方で、「言葉の壁で利用者とのコミュニケーションが心配」「外国人スタッフに認知症ケアを任せられるのか」と不安を感じている事業者も少なくありません。
本記事では、ミャンマー出身の特定技能スタッフ、シュエさん(27歳・女性)とズーさん(20歳・女性)へのインタビューをもとに、「外国人介護人材が現場で働くリアルな姿」をお届けします。来日して間もないお二人が、認知症の利用者と真摯に向き合い、現場でいきいきと働く姿は、介護事業者にとって多くのヒントを与えてくれます。
1. ミャンマーから日本の介護現場へ
来日の経緯と、特定技能1号の取得
シュエさんとズーさんは、ともにミャンマー出身の特定技能スタッフです。お二人は今年(2025年)来日し、特定技能1号(介護)の在留資格は2024年に取得しています。来日前は日本に来たことがなく、今回が初めての渡航でした。
来日当初、ミャンマーと日本の違いについて聞くと、食べ物や気候の差が最初に挙がりました。
「ミャンマーは暑い国なので、日本の寒さが最初は心配でした。でも今はすっかり慣れました」(シュエさん)
「私も最初は色々と違うなと感じましたが、今は慣れてきました」(ズーさん)
2. 特定技能の試験準備——独学で乗り越えた
「1週間の集中学習」と「ミャンマー語テキストの独学」
特定技能(介護)の試験は、介護に関する専門知識と日本語能力を総合的に問う内容で、決して簡単ではありません。お二人がどのように準備したかを聞くと、それぞれ工夫しながら独学で合格していることがわかりました。
「試験の1週間前から集中して勉強しました。業務の合間に必死に取り組みました」(シュエさん)
「私は独学で勉強しました。特定技能介護のテキストがミャンマー語で揃っていたので、インターネットでダウンロードして読み込みました」(ズーさん)
試験の中で難しかった内容について聞くと、「認知症についての問題が一番難しかった」と口をそろえます。ミャンマーでは日本ほど高齢化が進んでおらず、認知症という概念自体が身近ではないため、「聞いたことのない言葉や症状が多く、最初は戸惑った」と振り返ります。
それでも合格できたのは、「勉強したから大丈夫」という自信と粘り強さがあったからです。試験をクリアして来日している点からも、特定技能介護人材は一定の専門性と学習意欲を持った即戦力候補と言えます。
採用担当者が知っておくべきこと:試験合格者の専門性
- 特定技能(介護)の試験には、認知症・高齢者の疾患・身体介護など幅広い知識が問われる
- ミャンマー語を含む各国語でテキストが整備されており、独学で合格する人材も多い
- 試験合格者は介護の基礎知識を持った状態で来日するため、OJTがスムーズに進みやすい
3. 来日前の「不安」と、それを和らげたもの
一番の不安は「言葉」——現場の先輩が解消してくれた
来日前に最も不安だったことを聞くと、両者とも「言葉の壁」を挙げました。
「言葉が違うからちょっと心配でした。でも仕事を始めたら、先輩が優しい日本語でゆっくり教えてくれたので、仕事のやり方もわかって大丈夫になりました」(シュエさん)
また、来日前のサポートについても話を聞くと、アストミルコープの現地スタッフによる丁寧なフォローが安心感につながったと言います。
「来日前から、困ったことがあれば何でも聞いてくださいと言ってもらっていました。分からないことを教えてもらえたので、本当に大丈夫になれました」(ズーさん)
受け入れのポイント:不安を和らげる初期サポート
- 難しい専門用語だけで伝えず、短く区切った平易な表現(「優しい日本語」)を使う
- 「わからなかったら何度でも聞いて大丈夫」と明言し、質問しやすい雰囲気をつくる
- 相談役となる先輩スタッフを明確にし、来日直後から頼れる存在を用意しておく
- 来日前から現地サポートスタッフが丁寧にフォローすることで、着任後の不安が大幅に軽減される
4. 介護現場での仕事内容と、見つけた「やりがい」
食事・入浴・排泄介助——日本人スタッフと同様の業務を担う
現在お二人は、認知症の利用者が多いユニットで勤務しています。担当している業務は、食事介助・入浴介助・排泄介助・着替え・見守りなど、日本人スタッフと変わらない幅広いケアです。
仕事の中で楽しいと感じる瞬間について聞くと、二人とも「利用者様との会話やふれあい」を挙げました。
「自分から声をかけた時に、利用者さんがニコニコ笑ってくれるととても嬉しいです。一緒に絵を描いたり、漢字を教えてもらったりすることもあって、その時間がとても楽しいです」(シュエさん)
「朝に利用者さんから『おはよう』と言ってもらえることが嬉しいです。ミャンマーでは施設で毎朝挨拶し合う文化があまりないので、最初は驚きましたが、今はとても嬉しく感じています」(ズーさん)
外国人スタッフが加わることで、利用者との新しい会話のきっかけが生まれ、職場全体の雰囲気が明るくなるケースは多く報告されています。こうした「プラスの変化」も、外国人介護人材を受け入れる大きなメリットの一つです。
5. 大変だったこと・困った場面と、その乗り越え方
食事が進まない利用者、むせやすい利用者への対応
仕事の中で難しかった場面について聞くと、具体的なエピソードが返ってきました。
「食事介助の時、ご飯をなかなか食べてくれない利用者さんがいます。スプーンを向けても反対の方を向いてしまったり、食べている途中で眠ってしまったりすることがあって、最初はどうすればいいか悩みました。そういう時はリーダーに『まだ食べられないのですが、どうしたらいいですか?』と相談して、一緒に判断するようにしています」(シュエさん)
「食事中によくむせてしまう利用者さんがいます。あまりお話をされない方なので、何をしてほしいのか言葉ではわかりません。でも名前を呼びかけて、顔を見ながらゆっくり対応するようにしています」(ズーさん)
食事介助の「どこまで頑張ってもらうか」「どこでやめるか」の判断は、経験と施設ごとの方針が反映される難しい部分です。ここを丁寧に教えることが、外国人スタッフの不安を減らし、質の高いケアにつながります。
一方で、「試験で学んだ内容と実際の業務がほぼ一致していた」という声もあり、特定技能試験の内容が現場での実務にしっかりとつながっていることも確認できました。
受け入れのポイント:難しい場面での判断サポート
- 「わからなかったらすぐ相談」という文化を徹底し、外国人スタッフが一人で抱え込まない環境をつくる
- 食事介助・排泄介助など判断が必要な場面は、施設のルールをマニュアル化しておく
- 「先輩がそばで見てくれている」という安心感が、外国人スタッフの成長と自信につながる
6. 日本人スタッフとのコミュニケーション
「本当に優しい」——先輩の関わりが現場定着を支える
職場の日本人先輩スタッフとの関係について聞くと、お二人とも「本当に優しい」と即答しました。
「先輩たちは本当に優しくて、困ったことがあるといつも助けてくれます。日本語がうまく伝わらない時も、『そういうことですか?』と確認してくれるので、コミュニケーションは今のところ問題ありません」(シュエさん)
日本語が十分でない段階でも、先輩スタッフが「できる言葉だけで大丈夫」という姿勢で接してくれることが、外国人スタッフの心理的安全を生んでいます。受け入れ側にとっては何気ない配慮でも、外国人スタッフにとっては「ここで働き続けられる」という確信につながります。
7. 将来のビジョン——「介護福祉士を取って、ずっと働きたい」
将来の目標を聞くと、お二人とも力強い言葉が返ってきました。
「将来は介護福祉士の資格を取って、日本でずっと働き続けたいです」(シュエさん・ズーさん)
介護福祉士は、特定技能(介護)からさらにステップアップできる在留資格「介護」への移行にもつながる国家資格です。「ずっと日本で働きたい」という明確な意思は、長期定着を望む介護事業者にとって、これ以上ない心強い言葉ではないでしょうか。
適切な教育と支援を行えば、数年単位で安定して働いてくれる中核人材に育っていく可能性が、お二人のインタビューからも十分に感じられます。
8. 外国人介護人材の受け入れを検討する事業者へ
今回のインタビューで印象的だったのは、シュエさん・ズーさんともに「先輩が優しかった」という言葉を何度も口にしていた点です。給与や制度的な環境はもちろん大切ですが、「ここで働き続けたい」と思わせる最大の要因は、日々の職場の雰囲気と人間関係にあるようです。
受け入れを検討する介護事業者へのチェックポイント
- 労働条件・待遇が日本人スタッフと同等以上になっているか確認する
- 社会保険・労働基準法・入管法など、法令遵守が徹底されているか確認する
- OJTを担当する先輩職員を明確にし、教育時間を確保できているか確認する
- 「優しい日本語」で説明する工夫や、業務マニュアル・チェックリストの整備ができているか確認する
- 介護福祉士資格取得を目指す人材への学習支援・受験サポートの仕組みを整えているか確認する
シュエさん・ズーさんのように、「日本で長く介護の仕事を続けたい」と願い、利用者様に真摯に向き合う人材が、世界には多くいます。貴施設がそうした人材と出会い、ともにより良い介護をつくっていく一助となれば幸いです。
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